【干物語】第5回 深海魚クロシビカマス。1度は食べて欲しい絶品干物。
こんにちは。
みなさんは「深海魚」と聞いたとき、何を思い浮かべるでしょうか?
チョウチンアンコウ。
リュウグウノツカイ。
フクロウナギ。
ホウライエソ。
こんなのは結構ポピュラーですね。
見た目がとんでもなく奇抜だったり、グロテスクな風貌を持っていたり。
水圧が表層と比べ遥かに大きく、光の量も少ない厳しい環境。
そんな場所で過ごすために特殊な構造をしていたり特殊な器官を保有していることが多いです。
ところが、深海魚には食用魚として人気のものも沢山あります。
深海300m付近は中深海と呼ばれ、食用として、そして釣りのターゲットとして人気の魚の生息地になっています。
高級魚キンメダイ、アカムツ。
知る人ぞ知る超高級魚アラ。
これらをジグという鉛のルアーで狙う釣りは人気があります。
そんな深海魚を親しみ感じていただいたところで、この魚をご覧下さい。
とある魚市場で見つけました。
全身漆黒に包まれた、牙の鋭い見た目。
こちらはクロシビカマスという魚です。
生きているときはここまで黒ずんではおらず、ギラギラに輝きます。
地域によっては、スキヤキ、ナワキリ、サビ、サビタチ、エンザラなどとも言われます。
なんだそりゃ?
意外にご存じのかたもいるかもしれません。
クロタチカマス科には、
身体にあるワックスエステルが人間には分解できず、食べるとお尻から油がでてきてしまうことで有名な「バラムツ」や「アブラソコムツ」がいます。
これらは食品衛生法で流通が禁止されています。
そんな魚の仲間を食べて大丈夫なの?
クロシビカマスは、大丈夫!
この魚。特殊な要素がいくつかあります。
そのひとつに
まず、全身に脂がのっています。
魚には普通脂がのっている部位と少ない部位、それらが分かれているのが普通です。
そのため大トロや中トロなどと名前で判断できるわけです。
全身に脂がのっているということは異常なのです。
これはバラムツなどにも共通する特徴です。
それでは、実食編です。
干物の前に、焼き霜造り(炙り刺し身)と、あら汁(潮汁)で食べてみました。
焼き霜造りに無数の切れ込み、飾り包丁が入れてあるのは、骨切りによるものです。
実はこの魚は脂ののりかたに加えて骨の入りかたが特殊な構造になっています。
これがもうひとつの特殊な要素です。
長い中骨が多く存在し、骨切りをしないと刺し身で食べることは難しいです。
骨抜きは身崩れの観点から、ほぼ不可能でしょう。
焼き霜造りの味は、全くクセがなく脂ののった魚という印象です。
舌触りもよく、味も良し。
ぼくは刺し身が得意ではありませんが、問題なく食べられました。
潮汁も良い出汁がでて、美味しいです。
そして、干物。
まず焼く段階で驚かれることと思います。
脂が滴り落ちてくる。
骨切りしてあれば皮ごと食べることができます。
焼き霜造りとはまた違って、香ばしさが増し、脂をグリルで落としてしまえば、脂のしつこさも軽減されます。
それでいて、味もしっかりついていて美味しいです。
こちらも舌触りがよく、まろやかな印象です。
この魚はどうやら、相模湾周辺や伊豆大島、東伊豆などで多く食べられているようです。
さきにも述べた通り、中深海ジキングの外道としても釣れることがある魚です。
もし釣れたり、干物をみかけたときはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
【干物語】第4回 空飛ぶ魚「トビウオ」干物で食らう。
こんにちは。
みなさん、水泳はお好きですか?
ぼくは好きですが、バタフライには苦手意識があります。
でも、竜ヶ崎怜は好きです。
そして、僕がこのバタフライという泳法を思うと連想してしまう魚が「トビウオ」です。
とある夏の日、スーパーで安価で見つけて買ってみました。
トビウオなんて食べれるの?
そう思った方もいるかもしれません。
ですが、あなたは知らないうちにこのトビウオを摂取してるかもしれませんよ。
よく耳にする「あごだし」というのはトビウオ由来の出汁なのです。
そしてこの魚はダツ目トビウオ科。
同じダツ目には、国民的な大衆魚のひとつであるサンマがいます。
こう言われると、すこしトビウオを食用魚として身近に感じませんか?
追加の食用情報として、トビウオはあの有名な「くさや」に利用されることも多い魚です。
さて、干物をつくってみましょう。
シンプルに味は塩味にしてみます。
ここで捌いてみて気づいたこと。
この魚。硬い。
筋肉が発達しているからなのでしょうか?
同じサイズ感の他の魚と比べるとかなり身質が硬めです。
ちなみにトビウオは時速70kmほどで泳ぐことができ、滑空する距離は数百メートル飛ぶことができると言われています。
そんな運動に小さな体で耐えるには、こんな強靭な身体が必要なのでしょうか。
とりあえず完成しました。
では、実食。
とその前に。
独特の匂いがあります。
臭いとまでは思いませんが、潮の香りが強めです。
トビウオが海面を滑空しているとき、この匂いを味わっていそうな感じです。
ここで多少、好き嫌いは分かれそうです。
では、いただきます。
普通に美味しい。
身は硬すぎるかと心配がありましたが、火を通すと単にその繊維がしっかりとしているというだけで、美味しくいただけます。塩味の入り具合もいい感じです。
そして個体の問題もあるとは思いますが、脂は少なめで味がしつこくなく、さっぱりとした味わいです。
ヘルシー志向な方にはお気に入り登録していただけるんじゃないでしょうか。
総評です。
スポーティーな見た目通りの引き締まった、そしてさっぱりとした味です旨味もしっかりありました。
ただ、独特の潮の香りがありその点だけ、好き嫌いがわかれそうです。
実際に嗅がないと伝わらなそうですが。
気になった方は、是非食べてみてくださいね。
【干物語】第3回 食べればわかる。マトウダイの魅力
こんにちは。
今回はすこし見た目が変わった魚を紹介したいと思います。
とある夏の日のこと。
面白い魚はいないかなぁと、とある魚市場を散策していました。
すると、いました。
マトウダイです。
すごい見た目をしています。
グロテスクだと感じる人もいるかもしれません。
さらにこの魚、口がかなり伸びます。
生きた魚をこの口で襲い、捕食します。
ですが、見た目で判断しちゃだめだよ!
っていうのが、今回のお話です。
マトウダイはマトウダイ目マトウダイ科の魚。
似た魚に、カガミダイってやつもいます。
名前の由来は、
捕食する際に口が伸ばした姿が「馬の頭」に見えることから。
というものと、
体にある黒の斑点が「的」に見えるから。
というものが主です。
水族館にもしばしばいるので見覚えがある人もいるのではないでしょうか。
加えてこちら、フランス料理が好きな方には「サンピエール」という名前でご存知の方もいるかもしれません。
フランスではポピュラーな魚のようです。
どう調理しようか。
フランスではこちらのマトウダイとシタビラメは頻繁にムニエルにされる魚です。
ですが、今回は2品。
2枚おろしにして、1つを干物(みりん干し)、1つをアクアパッツァにすることにしました。
とにかくまずは干物で食べてみたいのです。
おろすときは先にその刺々しいヒレを先にキッチンバサミで切り落とすとやりやすいです。
また、上下の縁に硬い皮膚があり、これも切っておくとおろしやすくなります。
鱗はありません。
まずは干物、みりん干しです。
おろした切り身を、
醤油、酒、みりんで整えた液に20分くらい漬けてから一夜干しするだけです。
分量はテキトー。
ぼくはいつもこうなのです。
完成品はこちら。
かなり美味しい。
みりん干しにして正解でした。
醤油の風味が上品かつクセのない白身に染みて、みりんとの相性はトップクラスに感じました。
クセの強い見た目に騙されてはだめ。
身はめちゃくちゃ旨味も強いです。
お気に入りの干物の1つになりました。
次は、アクアパッツァ。
オリーブオイルベースで、トマトとナスと一緒に煮込みました。
他に何入れたか覚えてません。
こちらも分量はテキトー。
ニンニクは入れたほうがいいと思います。
こちらもめちゃくちゃうまい。
干物よりも身がより一層ふっくらして、オリーブの香りとトマトの酸味が溶け込んで、とても美味しい。
ジンジャエールに合う味です。
いかがだったでしょうか?
マトウダイの魅力が伝わっていれば幸いです。
こちらはスーパーでも時折見かけます。
見かけた際は是非、買い物かご入れてみましょう。
あとこの魚、寒い時期にはキモ(肝臓)が肥大化して、それが美味しいという人もいます。
ぼくは内臓が得意ではないのでこちらはあまり興味ないですが、キモ目当てでトライしてみるのも良いと思いますよ。
とにかく身にしろキモにしろ身体にハリがあって肥えてる個体を選ぶのが賢いと思います。
【干物語】第2回 甘鯛の干物ってどうなの?高級干物の世界
こんにちは。
今回は高級干物界の重鎮「アマダイ」についてです。
ここで言う高級干物とは、値段が高い干物のことを指しています。
高級干物の例としては、縁起がいいとされお祝い事でも活躍するマダイ、煮付けは絶品と名高いキンメダイ、北陸ではノドグロと言われ人気のアカムツなんかの干物は高価ながらも味が良いとされ、人気があります。
その界隈の一角を担っているのがアマダイの干物です。
京都では「グジ」と呼ばれ、味よし見た目よしのこの魚の存在感は大きく、値段もかなり高くつきます。
ところで、このアマダイ。
鯛の仲間ではないんです。
本当にマダイの仲間なのは有名どころではクロダイ(チヌ)やチダイ(ハナダイ)なんかがいますが、アマダイなんかは系統的にはマダイとは異なります。
こんな魚を、鯛の名前だけ借りているので「あやかり鯛」といいます。
この場合、アマダイはマダイより高い値段がつくことも多く、あやかっているというより寧ろ、マダイよりでしゃばっているような気もしますが…。
それでは本格的にアマダイのお話をします。
甘鯛はスズキ目キツネアマダイ科アマダイ属の総称で、日本で漁獲されるのは3種類がメインです。
余談ですが、海外ではキツネアマダイ科の総称をTilefishといい、日本のアマダイとは比べ物にならないくらい大きさになる種もいて、釣り魚として人気があります。
ただその種は日本のアマダイのようにピンク色をしていないですし、生物濃縮由来の毒性を示すこともあるらしく、日本のアマダイの認識とは大きく異なっているようです。
話がそれましたが、日本のアマダイは3種類といいましたね。
それが、「アカアマダイ」「シロアマダイ」「キアマダイ」です。
この中で一番高い値段がつく傾向にあるのは、「シロアマダイ」で、最も味が美味しいとされています。
ですが僕は、目を閉じて食べ比べしろと言われたら、アカアマダイとシロアマダイの味の区別は付かないと思います…。(キアマダイは食べたことがありません。いつか食べてみたいです。)
3種類いるとはいったものの、漁獲されているほとんどが「アカアマダイ」が占めている気がします。
スーパーで見かけたことがあるのは僕自身アカアマダイしか見たことがありません。
干物として売られているのも殆どアカアマダイです。
ここで衝撃的なことを言いますが、
僕はアマダイの一番美味しい食べ方は干物じゃない気がします。
僕がオススメするのは、「松笠焼き」と言われる調理法です。
日本料理に詳しい方ならご存知ではないでしょうか。
これはアマダイを鱗がついた状態で切り身にして、その鱗に向かって高温の脂をかけ流す。
すると鱗が逆立ちまるで松ぼっくりのようになる。これが松笠の名前の由来です。
サクサクに鱗が逆立ったそれをグリルに移し、全体に火が通るまで焼入れたら完成です。
塩をパラッとふって、すだちをひと絞りしたらもう最高です。
アマダイ独特の芳ばしい香りに加え、鱗のサクサク感、そして上品な甘味をもったその身を全て同時に口の中で感じることができます。
それでは本題のアマダイの干物のレビューに入りましょう。
先ほど書いた通り、まず香りが良いです。
芳ばしく、甘い匂い。
それもまたアマダイ特有のもので、あまり他の魚で似た香りのものは思いつきません。
そして身。鮮度が良いものであれば脂がノッている個体でなくてもしっとり、かつしっかり。
高級干物であるのも納得です。
この高級感を味わうというのが、アマダイの干物の醍醐味である気がします。
あまりスーパーで頻繁に見かけるというようなことはありませんが、干物の専門店やお魚市場なんかで見かけた際、気になった方は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
干物の世界観が一気に広がりますよ。
また鮮魚で20センチから30センチ程度の小ぶりの個体が安めに売られていることもしばしばあるので、それを干物にしてみるのも良いかもしれません。
干物と松笠焼きを食べ比べるのも面白いと思いますよ。
【干物語】第1回 干物界のモブキャラ、カマス。
こんにちは。
僕の大好物の一つに、干物があります。
干物っておいしくないですか?
僕は好きすぎて、自分で鮮魚の状態から自作したりしています。
僕な好きな干物について、その魅力や様々な知識などを皆さんにお伝えできたらなと思っています。
そこで今回から新しく、「干物語」というシリーズを始めてみようかと思いました。
もちろん、かの書籍シリーズおよびアニメシリーズの物語シリーズのオマージュのネーミングです。
読み方は、「ホシモノガタリ」とします。
前置きはこのくらいにして、みなさんは干物と聞かれて連想するものはなんですか?
アジの開きの干物
の人が多かったんじゃないでしょうか?
もしくは、ホッケの干物。
もしくは、サバの干物。
このへんはポピュラーですよね。ぼくも好きです。
でも僕はこの質問に対して
「カマスの干物」
と答えます。
え…カマス?
ぱっとしない人も多いかもしれません。
カマスですよ。あの細長い魚。
わかりますよ。なんでそんなところをチョイスするんだって仰っしゃりたいんですよね。
ぼくもカマスのモブキャラ感は理解しています。
ですが、干物を語る上でモブキャラの存在はめちゃくちゃでかいんです。
メジャーな干物から一歩踏み込んで、モブキャラに手を出してみる。
これが干物の魅力を知る際に大きな一歩ではないかと思っています。
そこで今回はまず、カマスについて語ってみようと思うんです。
まずカマスとは?
カマスは一般的にスズキ目カマス科カマス属に分類されている魚の総称を指すことが多いです。
釣り人にも人気のターゲットの1つです。
様々のルアーで狙えてゲーム性も高いので、カマシングといって専門に狙う人もいるくらいです。
スーパーに並んでいるカマスには大きく2種類あります。
それが、「アカカマス」と「ヤマトカマス」。
アカカマスは、本カマスとも言われており、こちらのほうが美味しいとされています。
ヤマトカマスは、水カマスなんて言われており、アカカマスと味が比較されることが多く、こちらは2軍的な立ち位置となっています。
見分け方は少し難しいかもしれません。
簡単に言えば、アカカマスは金色。ヤマトカマスは銀色。
ぼくが食べてほしいのは、アカカマスです。
旬は秋から初夏にかけてと言われています。
まさに、今。
ぼくもつい最近食べましたけど、特にこの時期は味が濃い。脂ものっていて最高でした。
ここから、カマスの干物が優れているところ、他の干物にはない差別化点をお話します。
まず、この魚の身の繊細さについて。
脂がのっているものは脂の甘みが、その繊細な身質に絡んで、口どけも非常に良いです。
次に、この魚の香りが良いんです。
魚にはそれぞれ独自の風味が存在します。
カマスは皮目が炙られると、とても良い香りを放ちます。
ぼくは特にこの点がお気に入りです。
炙り刺し身などにしてもこの利点は生きます。
こんなところです。
カマスの魅力は伝わったでしょうか?
少しでも気になった人は、スーパーで見かけた際に一度トライしてみてくださいね。
蛇足ですが、アカカマスを描いてみました。